八日目の蝉をNEeeeTが映画レビューしてみました、の巻

八日目の蝉

2011年
公開 日本
時間 147分
監督 成島出
出演 井上真央 永作博美 小池栄子 劇団ひとり 田中泯
原作 角田光代

評価 ★★★★☆

予告・キャッチコピー
「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」
「なぜ誘拐したの? なぜ私だったの?」

※この記事はネタバレを含みます。

 

ストーリーをすっげえさらっと説明すると、永作博美が赤ん坊を誘拐。
で、その赤ん坊連れて逃げる話。
へんな宗教入会して2(?)年暮らす。で、伊豆大島に逃げて、そこで暮らす。
という赤ん坊が4歳になるまでの永作博美(誘拐犯)のパートがひとつ。
誘拐された赤ん坊が大学生(井上真央)になったあたりで子どもできたり、
宗教施設でいっしょに育ったお姉ちゃんみたいなひと(小池栄子)と、
伊豆大島に行ってみたりしました。あと、実母とか、実父とのまあ、
心の葛藤というか、やりとりもあります、というパートがもうひとつ。
この2パートが時系列入り乱れて展開されます。

さて、まず、なげーよ。
2時間か、ひょっとしたら100分くらいでいい。
★半個はここで失われている。あと半個はひとり。
ぼくはまあ、ふつうにおもしろく見ましたが、どう見るかで評価ががらりと変わる。
整合性とか考えると、まあ、下手したら駄作レベル。
ただ、「考えるな! 感じろ!」と思考放棄すると名作レベル。
セミはみんな7日で死ぬから、8日目まで生きてるセミがいたら、
みんな死んじゃってるのに、すごく不幸だ。と井上真央が小池栄子に語る。で、その後、
小池栄子が「8日目にすごく綺麗な世界が見られるかもしれない(うろ覚え)」
このへんがタイトル「八日目の蝉」にかかってくる重要部分。
まあ、それはそうなんだけどね。チャンスは多いからね、長いとね。
孤独と引き換えに、美しさは等価交換になるのか?
逃げまわる永作博美の情況とも合わさる。ここを理路整然と突き詰めていくと、
下手したら駄作と罵ることになると思うので、そんな無粋なことはしないwww
いいんです、へえ、月島かぁ、みたいな半分他人ごと感覚で見れば。
感情移入とか、どうなの、その風潮? ねえ、それ大事?
アマデウス見て、サリエリにしか感情移入できない! ってゴネますか?

どうでもいいんす、そんなもん。
感情移入大事だけど、べつに楽しみ方それだけじゃねーから。
ということで、これはもう複雑な方向に「感情分散」させていって、
多角的にぐちゃぐちゃすることで感情を高揚させましょう。
後半からは、「いつか終わるこのしあわせ」の感じがチクチクします。
だけに長いのが痛い。その感じ出始めてからが長い。短すぎてもアレだが。

さて、気になった細部をちょこちょこと。
まず、井上真央と永作博美の坂を自転車で下るシーン。
この重ねはうまいよね。これはうまい。マジで。
これだけで映像化する価値はあったと思う。
あと「お星様の歌歌って」もうまい。坂本九はズルい。反則。
風吹ジュンの「ありがとう」にもホロっとする。
そして、なにより、細部で押しておきたいのは、
井上真央の汗のにじんだ背中であるwww

画像がなくて、ほんとうに済まないと思うw
キッズ・ウォー嫌いだったから、個人的にあんまり好感のない井上真央だけど、
このなんというか夏全開の事後シーンは、エロいよねwww
が、相手が劇団ひとりってどうなんだマジでwww
もっと無個性か、もっと残念なイケメンであるべき。
アクが強くてフツーのイケメンでもないひとりは、正直ミスキャスト。

そんな優秀な細部を経過していきながらw ストーリーはラスト局面へ。
永作博美が捕まるときの、「その子はまだ夕ご飯を食べていません」
井上真央が永作博美を「お母さん」と絶対に呼ばず、ふたりの再会もない。
でも、「あなたのことも憎みたくない」とラストでふと吐露する。
このあたりで「泣ける泣けない」の話はすっぱり評価が別れるライン。
そこはそのまま、泣けました、とか、感情移入がイマイチ、とか言ってればいい。
ちなみにぼくは「泣けました」www
それよりもそれよりも、こういった一連のラストシーンに井上真央の子ども云々のくだりは
いらなかったんじゃないか、とふとよぎる。希望とかね、いらんよ。
これにそんなあっっっっっっっっったり前の、ステロタイプの希望を申し訳程度に添えられても、
そこは興ざめしかない。結局、井上真央が本来抱えておくべきだった、
憎しみとか、とは言えな愛情とか、そのへんの方向性は内部的、内向的なものでありながら、
しかし常に「実母」か「誘拐犯」に向いていて、価値がある。
「子ども」という言ってしまえばぽっと出のキャラに、その方向を預けるのは安易すぎる。
「なんでだろう、私、もうこの子のこと好きだ」
いや、それはたしかに一部の方には感動的だろう。けど、そうじゃねえだろ。
結局、感情の方向を分散させたごった煮を求めていたけれども、
「感情移入」方面に無理やり連れて行かれた。そういう作りなんだものな。
これを目指したんだとしたら、残念すぎるけど、まあ、深い分析は野暮な映画だと、
レビュー前半でも言った手前、感情をぐちゃぐちゃできました、と言っておく。
オススメしますか? と言われれば、見ろ、そして考えるな、と複雑に答える映画。

テキトーな3行まとめ
井上真央がエロい。ただ、アルコール全然飲まないのはどうなの? 超気になったんだがw
永作博美と風吹ジュンの安定感がハンパねえ。ストーリの安定感もハンパねえ。
あと、井上真央と永作博美が再会しないあたり、ふつうの映画よりは価値あるわ。

偏見に満ちた3行まとめ(しったか含む)
角田光代はたしかにすごい。正直あんまり読んでないけど、たしかにすごい。
なんというか、なによりその完成された感がハンパねえ。絲山秋子もだけど。
成島出はなにがいいのかイマイチよくわからん。原作次第で揺れすぎだろう。