魔法少女まどかマギカ 第2話「それはとっても嬉しいなって」
マミ「私は巴マミ。貴方達と同じ、見滝原中の3年生。そして、キュウベエと契約した魔法少女よ」
まどか「っは。うーん。ふぅん。また変な夢。ん?」
キュウベエ「おはよう。まどか」
まどか「っは。うっへ。」
母「まどか。夕べは帰りが遅かったんだって。」
まどか「先輩の家にお呼ばれしちゃって。」
母「ま、門限とかうるさいことは言わないけどさ、晩飯の前には一報いれなよ。」
まどか「うん、ごめんね。」
キュウベエ「ふーふぃー。ふぃーふふー。」
まどか「本当に人には見えないんだ。」
さやか「うわぁ。」
まどか「素敵なお部屋。」
マミ「一人暮らしだから遠慮しないで。ろくにおもてなしの準備も無いんだけど。」
まどか「マミさん。すっごく美味しいです。」
さやか「うん、めっちゃ美味」
マミ「ありがとう。キュウベエに選ばれた以上、あなた達にとっても他人事じゃないものね。ある程度の説明は必要かと思って。」
さやか「うんうん、何でも聞いてくれたまえ。」
まどか「さやかちゃん、それ逆。」
マミ「ふふ。」
まどか「わぁ、綺麗。」
マミ「これがソウルジェム。キュウベエに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。魔力の源でもあり、魔法少女である証でもあるの。」
さやか「契約って?」
キュウベエ「僕は、君たちの願い事を何でも一つ叶えてあげる。」
さやか「え、本当?」
まどか「願い事って?」
キュウベエ「なんだって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。」
さやか「うぅわ。金銀財宝とか、不老不死とか、満漢全席とか?」
まどか「いや、最後のはちょっと。」
キュウベエ「でも、それと引換に出来上がるのがソウルジェム。この石を手にした者は、魔女と戦う使命を課されるんだ。」
まどか「あっ魔女」
まどか「ねぇ、ママ。」
ママ「うーん?」
まどか「もしも、もしもだよ。魔法でどんな願い事でも叶えてもらえるって言われたらどうする?」
ママ「役員を二人ばかし外に飛ばしてもらうわ。あぁ、あとそうねぇ。社長もさぁ、もう無理が利く年じゃねぇんだから、そろそろ隠居考えて欲しいんだけど、代わりがいないってのがなぁ。」
まどか「いっそ、ママが社長さんになっちゃたら。」
ママ「うん?その手があったか。営業部にさえしっかり根回ししとけば、企画部と総務は言いなりだし、そうなると問題は経理のハゲか。あれか、むしるか。」
まどか「ママ、目が怖いよ。」
さやか「魔女ってなんなの?魔法少女とは違うの。」
キュウベエ「願いから生まれるのが魔法少女だとするば、魔女は呪いから生まれた存在なんだ。魔法少女が希望を振りまくように、魔女は絶望を撒き散らす。しかもその姿は普通の人間には見えないからたちが悪い。不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災のタネを世界にもたらしているんだ。」
マミ「理由のはっきりしない自殺や殺人事件はかなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。形のない悪意となって人間を内側から蝕んでいくの。」
さやか「そんなヤバイ奴らがいるのに、どうして誰も気づかないの。」
キュウベエ「魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を表さないからね。さっき君たちが迷い込んだ、迷路のような場所がそうだよ。」
マミ「けっこう危ないところだったのよ。アレに飲み込まれた人間は普通は生きて帰れないから。」
まどか「マミさんはそんなこわいものと戦っているんですか。」
マミ「そう命がけよ。だからあなた達も慎重に選んだほうがいい。キュウベエに選ばれた貴方達にはどんな願いでも叶えられるチャンスがある。でもそれは死と隣り合わせなの。」
まどか「ふえ。」
さやか「うえ、悩むな。」
マミ「そこで提案なのだけど、二人ともしばらく私の魔女退治に付き合ってみない。」
まどか・さやか「ええ。」
マミ「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみればいいわ。その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えて見るべきだと思うの。」
まどか「おはよう。」
ひとみ「おはようございます。」
さやか「おは・・・うえぇ。」
キュウベエ「おはよう、さやか。」
ひとみ「どうかしましたか、さやかさん。」
さやか「やっぱそいつ私たちにしか見えないんだ。」
まどか「そうみたい」
ひとみ「あの。」
さやか「ああ、なんでもないから。行こう。」
まどか「頭で考えるだけで会話とか出来るみたいだよ。」
さやか「えぇ、私たち、もう既にマジカルな力が?」
キュウベエ「いやいや、今はまだ僕が間で中継しているだけ。でも内緒話には便利でしょ。」
さやか「なんか、変な感じ。」
ひとみ「おふたりともさっきからどうしたんです。仕切りに目配せしてますけど。」
まどか「え。ぃや、これは、あの、その」
さやか「あぁ。」
ひとみ「まさか二人とも既に目と目で分かり合う間柄ですの。まぁ、たった一日でそこまで急接近だなんて。昨日はあの後一体何が。」
さやか「い、いや、そりゃねえわ、さすがに。」
まどか「たしかに色々、あったんだけどさ。」
ひとみ「でもいけませんわ。お二方、女の子同士で。それは禁断の恋の形ですのよ。」
さやか「バッグ忘れてるよー。」
まどか「あぁ、今日のひとみちゃん、なんだかさやかちゃんみたいだよ。」
さやか「どういう意味だよ、それは。」
まどか「ふい。」
さやか「つうかさ、あんた、のこのこ学校まで付いてきちゃって良かったの。」
キュウベエ「どうして。」
さやか「言ったでしょ。昨日のアイツ。このクラスの転校生だって。あんた命狙われてるんじゃないの。」
キュウベエ「むしろ学校のほうが安全だと思うな。マミもいるし。」
まどか「マミさんは3年生だから、クラスちょっと遠いよ。」
マミ「ご心配なく。話はちゃんと聞こえているわ。」
キュウベエ「この程度の距離なら、テレパシーの圏内だよ。」
まどか「あ、えっと、おはようございます。」
マミ「ちゃんと見守ってるから安心して。それにあの子だって人前で襲ってくるような真似はしないはずよ。」
さやか「ならいいんだけど。」
まどか「あ。」
さやか「げえ、噂をすれば影。」
さやか「あの転校生も、えっと、その、魔法少女なの?マミさんと同じ。」
マミ「そうね。間違いないわ。かなり強い力を持っているみたい。」
さやか「でもそれなら、魔女をやっつける正義の味方なんだよね。それがなんで、急にまどかを襲ったりしたわけ。」
キュウベエ「彼女が狙っていたのは僕だよ。新しい魔法少女が生まれることを阻止しようとしてたんだろうね。」
まどか「え。」
さやか「なんで。同じ敵と戦っているなら。仲間は多いほうが良いんじゃないの。」
マミ「それがそうでもないの。むしろ競争になることのほうが多いのよね。」
まどか「そんな、どうして。」
マミ「魔女を倒せばそれなりの見返りがあるの。だから時と場合によっては、手柄の取り合いになって、ぶつかることもあるのよね。」
さやか「つまりあいつは、キュウベエがまどかに声かけるって最初から目星を付けてて、それが朝からあんなに絡んできてたってわけ。」
マミ「たぶん、そういうことでしょうね。」
さやか「気にするなまどか。あいつがなんかちょっかい出してきたら。私がぶっ飛ばしてやるからさ。マミさんだって付いているんだし。」
マミ「そうよ。美樹さんはともかくとして、私が付いているんだから大丈夫。安心して。」
さやか「ともかくって言うな。」
先生「で、今まで勉強してきたみたいな、動作を行う人や物を主語にした表現は能動態と言われます。これに対して受動態というのは、BはAによってどうこうされるみたいに、動作を受ける人や物を主語にした表現なんですね。そういう受動態の形はBe動詞+過去分詞となります。例えば、He likes me.彼は私のことが好き」
まどか「はい。」
キュウベエ「あーん。」
さやか「ねぇ、まどか。願い事、何か考えた。」
まどか「うーん。さやかちゃんは。」
さやか「私も全然。なんだかなぁ。いっくらでも思いつくと思ったんだけどなぁ。欲しいものも、やりたいことも、いっぱいあるけどさ、命がけってところで、やっぱ引っかかっちゃうよね。そうまでするほどのもんじゃねぇよなぁって。」
まどか「うん。」
キュウベエ「意外だなぁ。大抵の子は二つ返事なんだけど。」
さやか「まぁ、きっと、私たちがバカなんだよ。」
まどか「ふぇ、そうかな。」
さやか「そう、幸せバカ。別に珍しくなんか無いはずだよ。命と引換えにしてでも叶えたい望みって。そういうの抱えている人は世の中に大勢いるんじゃないのかな。だから、ソレが見つからない私たちって、その程度の不幸しか知らないってことじゃん。、恵まれすぎて馬鹿になっちゃっているんだよ。なんで、私たちなのかな。不公平だと思わない。こういうチャンスほんとうに欲しいと思っている人は他にいるはずなのにね。」
まどか「さやかちゃん。」
マミ「大丈夫。」
さやか「昨日の続きかよ。」
ほむら「いいえ、そのつもりはないわ。そいつが鹿目まどかと接触する前にケリをつけたかったけど、今さらソレも手遅れだし。で、どうするの。あなたも魔法少女になるつもり?」
まどか「私は。」
さやか「あんたにとやかく言われる筋合いはないわよ。」
ほむら「昨日の話覚えている?」
まどか「うん。」
ほむら「ならいいわ。忠告が無駄にならないよう、祈っている。」
まどか「ほむらちゃん。ぁ、あの、あなたはどんな願い事をして魔法少女になったの?」
さやか「ひとみ、ごめん。今日はあたしら、ちょっとヤボ用があって。」
ひとみ「あら、内緒ごとですの。」
まどか「えっと。」
ひとみ「羨ましいですわ。もうお二人の間に割り込む予知なんて、無いんですのねえ。」
まどか「あ、あ。」
さやか「いや、だから違うって、それ。」
女性徒A「暁美さん、今日こそ帰りに喫茶店寄ってこう。」
ほむら「今日もちょっと、急ぐ用事があって。ごめんなさい。」
マミ「さて、それじゃ魔法少女体験コース第一弾。張り切って行ってみましょうか。準備はいい?」
さやか「準備になっているかどうか分からないけど、持ってきました。何も無いよりはマシかと思って。」
マミ「まぁ、そういう覚悟でいてくれるのは助かるわ。」
さやか「まどかは何かもってきた?」
まどか「え、えっと、わたしは。」
さあか「うわぁ。」
まどか「とりあえず、衣装だけでも考えておこうかと思って。」
さやか・マミ「あはははは。」
マミ「うん、意気込みとしては十分ね。」
さやか「こりゃ参った。あんたには負けるわ。」
マミ「これが昨日の魔女が残していった魔力の痕跡。基本的に魔女探しは足頼みよ。こうしてソウルジェムの捉える魔女の気配を辿っていくわけ。」
さやか「意外と地味ですね。」
さやか「光、全然変わらないすね。」
マミ「取り逃がしてから、一晩経っちゃったからね。足あとも薄くなってるわ。」
まどか「あのとき、直ぐ追いかけていたら。」
マミ「仕留められたかも知れないけど。あなたたちを放っておいてまで優先することじゃなかったわ。」
まどか「ごめんなさい。」
マミ「良いのよ。」
さやか「うん、やっぱりマミさんは正義の味方だ。それに引換、あの転校生、本当にむかつくな。」
まどか「本当に悪い子なのかな。」
さやか「ねぇマミさん。魔女のいそうな場所、責めて目星くらいはつけられないの。」
マミ「魔女の呪いの影響で割と多いのは交通事故や傷害事件よね。だから大きな道路や喧嘩の起きそうな歓楽街は優先的にチェックしないと。あとは自殺に向いてそうな人気のない場所。それから病院とかにとりつかれると最悪よ。ただでさえ弱っている人たちから、生命力が吸い上げられるから、目も当てられない事になる。かなり強い魔力の波動だわ。近いかも。」
マミ「間違いない、ここよ。」
さやか「マミさんアレ。」
さやか「うわあああ。」
マミ「ハッ!」
マミ「魔女のくちづけ。やっぱりね。」
まどか「ぅ、この人は。」
マミ「大丈夫。気を失っているだけ。行くわよ。」
マミ「今日こそ、逃さないわよ。」
さやか「う、うわあ。」
まどか「凄い。」
マミ「気休めだけど、これで身を守る程度の役には立つわ。絶対に私の側を離れないでね。」
まどか・さやか「はい。」
さやか「くんな。くんな。」
マミ「どう、こわい?二人とも。」
さやか「なんてことねえって。」
まどか「こわいけど、でも。」
キュウベエ「頑張って。もうすぐ決壊の最深部だ。」
マミ「見て、あれが魔女よ。」
さやか「うわ、グロイ。」
まどか「あんなのと、戦うんですか。」
マミ「大丈夫、負けるもんですか。」
マミ「下がってて。」
まどか「マミさあああん。」
マミ「大丈夫、未来の後輩に、あんまりカッコ悪いところ見せられないものね。」
マミ「惜しかったわね。」
マミ「ティロ・フィナーレ!」
さやか「勝ったの?」
まどか「すごーい。あ。」
マミ「これがグリーフシード。魔女の卵よ。」
さやか「た、卵。」
マミ「運がよければ時々魔女が持ち歩いていることがあるの。」
キュウベエ「大丈夫。その状態では安全だよ。むしろ役に立つ貴重なものだ。」
マミ「私のソウルジェム。夕べよりちょっと色が濁っているでしょ。」
さやか「そういえば。」
マミ「でも、グリーフシードを使えば、ほら。」
さやか・まどか「あ。」
さやか「綺麗になった。」
マミ「ね、これで消耗した私の魔力も元通り。前に話した魔女退治の見返りって言うのがこれ。」
マミ「あと一度くらいは使えるはずよ。あなたにあげるわ。暁美ほむらさん。」
さやか「あいつ。」
マミ「それとも、人と分け合うんじゃ不服かしら。」
ほむら「あなたの獲物よ。あなただけのものにすれば良いわ。」
マミ「そう、それがあなたの答えね。」
さやか「くぅ。やっぱり感じが悪いヤツ。」
まどか「仲良く出来ればいいのに。」
マミ「お互いにそう思えれば、ね。」
少女「ぁ、ここは。あれ、私は。い、いやだ。私、なんでそんな、どうして、あんな、ことを。」
マミ「大丈夫。もう大丈夫です。ちょっと悪い夢を見てただけですよ。」
さやか「一件落着って感じかな。」
まどか「うん。」
まどか「叶えたい願い事とか、私には難しすぎて、直ぐには決められないけれど、でも、人助けのために頑張るマミさんの姿はとても素敵で、こんな私でもあんな風に誰かの役に立てるとしたら、それはとっても嬉しいなって思ってしまうのでした。」
次回予告
ほむら「無理してカッコつけてるだけで、怖くても辛くても、誰にも相談できないし、一人ぼっちで泣いてばかり。良いものじゃないわよ、魔法少女なんて。」
マミ「もう何も恐くない。」