魔法少女まどか☆マギカ 第1話「夢の中で逢った、ような……」
まどか「ひどい。」
キュウベエ「仕方ないよ。彼女一人では荷が重すぎた。でも、彼女も覚悟の上だ。」
まどか「そんな、あんまりだよ。こんなのってないよ。」
キュウベエ「諦めたらそれまでだ。でも、君なら運命を変えられる。」
キュウベエ「避けようのない滅びも、嘆きも、全て君が覆せば良い。そのための力が君には備わっていんだから。」
まどか「本当なの?」
まどか「私なんかでも、本当に何かできるの?こんな結末を変えられるの?」
キュウベエ「勿論さ。だから僕と契約して、魔法少女になってよ。」
まどか「ふぅん・・・夢落ち・・・」
まどか「おはようパパ。」
パパ「おはよう、まどか。」
まどか「ママは?」
パパ「タツヤがいってる。手伝ってやって。」
タツヤ「ママー、ママー、あさー、あさ―、おきてー、ママー、ママー。」
まどか「起きろ~」
ママ「どぅああああああ。あれ?」
タツヤ「ママ起きたね」
ママ「最近、どんなよ。」
まどか「ひとみちゃんにまたルームレターが届いたよ。今月になってもう2通目。」
ママ「ふん。直にコクるだけの根性のねぇ男は駄目だ。」
ママ「かずこはどう?」
まどか「先生はまだ続いてるみたい。ホームルームでのろけまくりだよ。今週で3ヶ月目だから記録更新だよね。」
ママ「さぁどうだか。今は危なっかしい頃合いだな。」
まどか「そうなの?」
ママ「ホンモノじゃなかったら大体この辺でボロが出るもんさ。まぁ、乗り切ったら1年は持つだろうけど。」
まどか「ふぅん。」
ママ「完成。」
まどか「リボンどっちかな?」
まどか「えぇ、派手すぎない?」
ママ「それくらいでいいのさ。女は外見でなめられたら終わりだよ。」
ママ「ふ、良いじゃん。これならまどかの隠れファンもメロメロだ。」
まどか「いないよそんなの。」
ママ「いると思っておくんだよ。それが、美人の秘訣。」
まどか「ふふ。」
タツヤ「あぁ~、あ~お。お。」
ママ「あっと。セーフ。はい、残さないで食べてね。」
タツヤ「あいー。」
パパ「コーヒー、おかわりは?」
ママ「おぉ、良いや。」
ママ「おっし。じゃ、行ってくる。」
パパ・まどか・タツヤ「いってらっしゃーい。」
パパ「さぁ、まどかも急がないと」
まどか「え、う、うん。」
まどか「行って来まーす。」
パパ「いってらっしゃい。」
タツヤ「いってらっしゃい。」
まどか「おはよう。」
仁美「おはようございます。」
さやか「まどか遅い。お、可愛いリボン。」
まどか「そ、そうかな?派手すぎない?」
仁美「とても素敵ですわ。」
まどか「でね、ラブレターでなく、直に告白できるようでなきゃ駄目だって。」
さやか「相変わらずまどかのママはカッコイイな。美人だし、バリキャリだし。」
仁美「そんな風にきっぱり割り切れたら良いんだけど。はぁ。」
さやか「羨ましい悩みだね。」
まどか「良いなぁ。私も一通くらい貰ってみたいな。ラブレター。」
さやか「ほぅ。まどかもひとみみたいなモテモテな美少女に変身したいと?そこで先ずはリボンからイメチェンですかな?」
まどか「ち、ちがうよ。これはママが」
さやか「さては、ママからモテる秘訣を教わったな。けしからん。そんな破廉恥な子はこうだ。」
まどか「や、ちょっ、やめて。」
さやか「可愛いやつめ。でも男子にモテようなんて許さんぞ。まどかは私の嫁になるのだ。」
仁美「う、うん。」
さやか「う。」
先生「うん。今日は皆さんに大事なお話があります。心して聴くように。目玉焼きとは堅焼きですか、それとも半熟ですか。はい、なかざわくん。」
なかざわ「え、えっと・・・ど、どっちでも良いんじゃないかと。」
先生「そのとおり。どっちでも宜しい。たかが卵の焼き加減なんかで女の魅力が決まると思ったら大間違いです。女子の皆さんは、くれぐれも、半熟じゃなきゃ食べられないとかぬかす男とは交際しないように。」
さやか「ダメだったか。」
まどか「ダメだったんだね。」
先生「そして男子の皆さんは、絶対に卵の焼き加減に、ケチをつけるような大人にならないこと。」
先生「はい。あとそれから、今日は皆さんに転校生を紹介します。」
さやか「そっちが後回しかよ。」
先生「じゃあ、あけみさん、いらっしゃい。」
さやか「うわ、すげぇ美人。」
まどか「ぇ」
まどか「うそ。まさか。」
先生「はい、それじゃ自己紹介いってみよう。」
ほむら「暁美ほむらです。よろしくお願いします。」
まどか「ぇ」
先生「えっと、あけみさん?」
女性徒A「あけみさんって、前はどこの学校だったの。」
ほむら「東京の、ミッション系の学校よ。」
女性徒B「前は部活とかやってた?運動系?文化系?」
ほむら「やってなかったわ。」
女性徒C「凄い綺麗な髪だよね。シャンプーは何使ってるの?」
仁美「不思議な雰囲気の人ですよね。暁美さん。」
さやか「ねぇまどか。あの子知り合い?なんかさっきおもいっきりガン飛ばされてなかった?」
まどか「いや、えっと。」
ほむら「ごめんなさい。なんだか緊張しすぎたみたいで。ちょっと、気分が。保健室にいかせて貰えるかしら。」
女性徒A「え、あ、じゃあ私が案内してあげる。」
女性徒B「私もいくいく。」
ほむら「いえ、お構いなく。係の人にお願いしますから。」
ほむら「鹿目まどかさん。あなたがこのクラスの保健係よね。」
まどか「え、えっと。あの。」
ほむら「連れてってもらえる?保健室。」
まどか「あ、あの。その、私が保健係って、どうして」
ほむら「早乙女先生から聞いたの。」
まどか「あ、そうなんだ。えっとさ、保健室は」
ほむら「こっちよね。」
まどか「ぇ、うん。そうなんだけど。いや、だから、その、もしかして、場所知ってるのかなって。」
まどか「あぁ、暁美さん。」
ほむら「ほむらで良いわ。」
まどか「ほむらちゃん。」
ほむら「何かしら?」
まどか「あぁ、えっと、その、変わった名前だよね。」
まどか「いや、だから、あのね。へ、変な意味じゃなくてね。その、カッコイイな、な、なんて。」
ほむら「鹿目まどか。あなたは自分の人生が尊いと思う?家族や友達を大切にしてる?」
まどか「え、えっと、わ、わたしは、大切、だよ。家族も、友達のみんなも、大好きで、とっても大事な人達だよ。」
ほむら「本当に?」
まどか「ほんとうだよ。嘘のわけないよ。」
ほむら「そう。もしそれが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて絶対に思わないことね。さもなければ、すべてを失うことになる。」
まどか「え。」
ほむら「あなたは、鹿目まどかのままでいればいい。今まで通り、これからも。」
体育教師「け、県内記録じゃないあれ。」
さやか「えぇ、なにそれ?」
まどか「訳分かんないよね。」
さやか「文武両道で才色兼備かと思いきや、実はサイコな電波さん。くう、どこまでキャラ立てすりゃ気が済むんだ、あの転校生は。萌か。そこが萌なのか。」
仁美「まどかさん。本当に暁美さんとは初対面ですの?」
まどか「うーん。常識的にはそうなんだけど。」
さやか「なにそれ。非常識なとこで心当たりがあると?」
まどか「あのね、夕べあの子と夢の中で会ったような。」
さやか「すっげえ。まどかまでキャラが立ち始めたよ。」
まどか「ひどいよ。私真面目に悩んでるのに。」
さやか「あぁ、もう決まりだ。それ前世の因果だわ。あんたたち、時空を超えてめぐり合った運命の仲間なんだわ。」
仁美「夢って、どんな夢でしたの?」
まどか「それが、なんだかよく思い出せないんだけど。とにかく変な夢だったってだけで。」
仁美「もしかしたら、本当は暁美さんと会ったことがあるのかもしれませんわ。」
まどか「え?」
仁美「まどかさん自身は覚えていないつもりでも、深層心理には彼女の印象が残っていて、それが夢に出てきたのかもしれません。」
さやか「それ出来過ぎてない。どんな偶然よ。」
仁美「そうね。」
仁美「あら、もうこんな時間。ごめんなさい、お先に失礼しますわ。」
さやか「今日はピアノ?日本舞踊?」
仁美「お茶のお稽古です。もうすぐ受験だっていうのにいつまで続けさせられるのか。」
さやか「うわぁ、小市民に生まれて良かったわ。」
まどか「私たちも行こっか。」
さやか「うん、まどか帰りにCD屋に行ってもいい?」
まどか「良いよ。また上条くんの?」
さやか「まあね。」
仁美「ではまた。」
さやか「じゃあね。」まどか「ばいばーい。」
キュウベエ「助けて。」
まどか「うん?」
キュウベエ「助けて。まどか。」
まどか「え、え?」
キュウベエ「僕を、助けて。」
さやか「うん?」
まどか「誰、誰なの?」
キュウベエ「助けて。」
まどか「どこにいるの?あなた誰?」
キュウベエ「助けて。」
まどか「あなたなの?」
キュウベエ「助けて。」
まどか「ほむらちゃん。」
ほむら「そいつから離れて。」
まどか「だ、だって。この子、怪我してる。だ、だめだよ。ひどいことしないで。」
ほむら「あなたには関係ない。」
まどか「だってこの子、私を呼んでた。聞こえたんだもん。助けてって。」
ほむら「そう。」
まどか「え。」
さやか「まどか、こっち。」
まどか「さやかちゃん。」
ほむら「こんな時に。」
さやか「なによあいつ。今度はコスプレで通り魔かよ。つか、なにそれ。ぬいぐるみじゃないよね。生き物?」
まどか「わかんない。わかんないけど、この子助けなきゃ。」
さやか「あれ、非常口は。どこよここ。」
まどか「変だよここ。どんどん道が変わって行く。」
さやか「ああもうどうなってんのさ。」
まどか「あ、い、何かいる。」
さやか「冗談だよね。私、悪い夢でも見てるんだよね。ねぇ、まどか。」
さやか「あ、あれ。」
まどか「これは。」
マミ「危なかったわね。でも、もう大丈夫。」
マミ「あら、キュウベエを助けてくれたのね。ありがとう。その子は私の大切な友達なの。」
まどか「わたし呼ばれたんです。頭の中に直接この子の声が。」
マミ「ふぅん。なるほどね。その制服、あなたたちも見滝原の生徒みたいね。2年生?」
さやか「あなたは?」
マミ「そうそう、自己紹介しないとね。でも、その前に。」
マミ「ちょっと一仕事片付けちゃって良いかしら。」
マミ「っは。」
まどか「す、すごい。」
さやか「も、もどった。」
マミ「魔女は逃げたわ。仕留めたいなら直ぐに追いかけなさい。今回はあなたに譲ってあげる。」
ほむら「私が用があるのは」
マミ「飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの。」
マミ「お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
まどか・さやか「はぁ。」
キュウベエ「ありがとうマミ。助かったよ。」
マミ「お礼はこの子たちに。私は通りかかっただけだから。」
キュウベエ「どうもありがとう。僕の名前はキュウベエ。」
まどか「あなたが、私を呼んだの?」
キュウベエ「そうだよ、鹿目まどか。それと美樹さやか。」
さやか「なんで私たちの名前を?」
キュウベエ「僕、君たちにお願いがあって来たんだ。」
まどか「お、お願い?」
キュウベエ「僕と契約して、魔法少女になって欲しいんだ。」
魔法少女まどか☆マギカ 第1話「夢の中で逢った、ような……」完
(次回予告)
キュウベエ「僕は君たちの願い事をなんでも一つ叶えてあげる。」
さやか「え、ほんとう?」
まどか「願い事って」
キュウベエ「なんだって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。」
まどか「それはとっても嬉しいなって。」